飲食店の運転資金はいくら必要? 目安などをお教えします!
日本政策金融公庫の統計からわかる飲食店が用意すべき開業資金/運転資金の安全ライン
独立して飲食店を開業するとします。テナントビルを借り、什器や家具、内装を調えて店舗を準備するのにももちろん資金が必要となりますが、これから店舗を長く運営していくための運転資金を準備しなければなりません。
飲食業で独立・起業する場合、開業時の運転資金はどれくらい準備すればよいのでしょう?今回は、飲食店を開業した後、事業が軌道に乗るまで安全に店舗を運営していくために「ざっくり」どれくらいの運転資金が必要なのかを考えてみましょう。
この記事の目次
飲食店の運転資金とは?
「飲食店を運営していくための運転資金は最初にどれくらい準備すればよいのだろうか?」という質問に関しては、明確で絶対に正しいという答えはないように思われます。
「なんとなく3ヶ月分」というような意見もあれば、「飲食店は現金商売(日銭商売)だから、すぐにお金が入ってくるから運転資金なんていらないよ」など、色々な意見が聞かれます。
確かに、その場で「お代」としてキャッシュで受けとることができるので、入金されるまでの債権回収に時間がかかるような掛売りのビジネスと比べ、飲食業はキャッシュフローの観点から資金繰りはラクです。よって、運転資金も「少なめでよいのではないか?」と考えてしまいがちです。
よくある失敗
それでは、飲食店の運転資金に関する失敗例を3つ紹介します。次に紹介する事例と同じ状況になると、短期間でお店が潰れてしまうかもしれません。
日本政策金融公庫の融資審査に落ちてしまう
まずは、日本政策金融公庫の審査に落ちてしまった事例です。自己資金があったとしても、多くの場合すべての初期費用を用意するのは難しいでしょう。そこで融資を検討するわけですが、審査に通りにくい属性のケースがあります。
事例で審査に落ちてしまった原因は、個人の信用の低さでした。自己資金の額しか考慮しておらず、個人が借りた返済に目を向けていませんでした。事例では、個人で融資を受けており、何度か返済が滞ったことがあります。日本政策金融公庫の融資担当者は、信用情報を確認し度重なる延滞に気づいたため、融資は審査に落ちてしまったのです。
初期費用を抑えすぎた
初期費用を抑えすぎたケースでも、失敗事例があります。飲食店が開業時に必要な運転資金は後ほど詳しく解説しますが、最低でも600万円は見積もる必要があります。運転資金とは、不動取得費や内装などの費用などです。
世間でいう「運転資金はいらない」という声を鵜呑みにしていると、失敗する恐れがあるでしょう。初期費用が安くても、経費削減を心がけ計画を立てたなら問題はありません。しかし、失敗例ではお金の計画を立てておらず、資金が不足してしまいました。
固定費を考えていなかった
毎月かかる固定費も、明確に考慮しなければ失敗する恐れがあります。固定費は、テナント料や従業員の給料、材料費などです。開業したばかりで集客できなくても、固定費は同じようにかかります。初めからお客様がどんどん来ると思っているケースで、失敗事例がありました。
飲食店が開業後軌道に乗り始める平均の期間は?
「明確で絶対に正しい答えはない」と結論づけてしまうと元も子もないので、統計データを元にして考えてみましょう。飲食店の起業・開業支援を実際におこなっている日本政策金融公庫(日本公庫)の調査結果が参考になります。
日本政策金融公庫が発行する「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」という手引きの中に、「開業後軌道に乗り始めた時期」について、興味深い調査結果があります。
調査によると、約6割の企業が、開業した飲食店の事業を軌道に乗せるために半年以上かかっています。また、最短の3ヶ月以内で軌道に乗ったとの回答はわずか26.1%しかありません。
創業時の宣伝広告費、人材募集費等の運転資金や、事業開始後の運転資金(半年程度の赤字補てん資金等)の準備は大丈夫ですか?
日本政策金融公庫「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」より引用
上記のように、前述の調査元の日本政策金融公庫も「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」の「創業準備のチェックポイント|必要な資金」の項目において、開店後半年程度の赤字を補てんできる程度の運転資金を準備するように推奨しています。
飲食店が開業時に必要な運転資金は?
ここまで述べてきたように、安全ラインと言う名目を掲げるなら、やはり「運転資金半年分(開店後半年程度の赤字を補てんできる程度)の確保」が、飲食店の開業時に準備しておくべき運転資金の基準ということになるでしょう。
ただし、運転資金を調達する場合、金融機関から借入金として丸々半年分(6カ月分)の融資を受けることは現実的には難しいと思われます。よって、最低3ヶ月分程度の運転資金は自己資金で個人で貯蓄して準備しておき、プラスの3ヶ月分を制度融資や創業融資、あるいは助成金・補助金などで資金調達するのが良いでしょう。
具体的な運転資金の目安は、600万円~1,000万円です。お店の種類や、経営者の知識量などによっても、運転資金の目安は多少変わります。
中でも初期費用で金額が大きくなりやすいのは、物件取得費と店舗投資費用です。物件取得費は、保証金が賃料の約10ヶ月分かかります。保証金だけでも、月額賃料20万円なら200万円必要です。また内装は、厨房機器や家具類、内装工事などもかかります。居抜き物件なら前の設備をそのまま活用できますが、すべて変えるなら数百万円程度とかなり高額です。
運転資金を少なくしたいなら、お店を持たずキッチンカーで営業する方法も検討しましょう。飲食店開業で失敗したくないなら、まずは資金計画を立てるところから始めてみてください。
まずは、自分のお店がどれくらいの期間で利益を出せそうか見極めを慎重に行いましょう。
また、想定外の出費も現実にはよくあります。居抜き物件で開業をしたら、設備故障で追加工事が必要になるなどは珍しくありません。
ぎりぎりの資金計画ではなく、プラスαを考えておくのが重要です。
まとめ
飲食店に限らないが、開業してからどれくらいすれば順調に売上が上がるようになるのかは誰にも分かりません。したがって、「開業時の運転資金をどれくらい準備するか?」は、先人の知恵(ここでは調査結果)を借りつつ計画を立て、余裕をもって成功確率の高い選択肢をとる事が成功の近道です。
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(編集:創業手帳編集部)
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